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出典: 週刊俳句編:子規に学ぶ俳句365日 p7−p57
本には解説が書かれているが、ここには取り上げない。興味のある方は原著を参考にして下さい。
新年の 白紙綴ぢたる 句帖哉
初夢の 思ひしことを見ざりける
めでたさも 一茶位や 雑煮餅
目出度さも ちう位也 おらが春 小林一茶
世の中に 馴れぬごまめの形かな ごまめ=田作 カタクチイワシの幼魚
人の手に はや古りそめぬ 初暦
灯を消して 待たずしもあらず 嫁が君 嫁が君=鼠=ねずみ
今年はと 思ふことなきにしもあらず
初芝居見て来て 曠著いまだ脱がず 曠著=はれぎ=晴れ着
いくたびも 雪の深さを尋ねけり
雪ふるよ 障子の穴を見てあれば
雪の家に寐て居ると思ふばかりにて
障子明けよ 上野の雪を 一目見ん
寒さうな 外の草木や ガラス窓
館椿 力を入れて 赤を咲く
凍筆を ホヤにかざして 焦しけり ホヤ=火舎・火屋=香炉や足のついた火鉢
朝見れば 吹きよせられて 浮寝鳥 浮寝鳥=うきねどり=水鳥
藪ごしや はだか参りの 鈴冴る 冴る=さゆる
冬菊や 下雪隠へ行く 小道 雪隠=せっちん=トイレ
鴛鴦の 羽に薄雪つもる 静さよ 鴛鴦=おし 羽=は
青竹をつたふ 霰の すべり哉 霰=あられ
裏不二の 小さく見ゆる 氷哉 裏不二=裏富士=北から見る富士山
寒月や 造船場の 裸船
雪の旅 おもしろからん さりながら
何も彼も 水仙の水も 新しき
大仏の 鼻水たらす 氷柱哉 氷柱=つらら
買ふて来た 冬帽の 気に入らぬ也
雪ふるよ 障子の穴を見てあれば
寒からう 痒からう 人に逢ひたからう 痒い=かゆい
下総や 冬あたたかに 麦畠 下総=しもうさ
一村は 雪にうもれて 煙かな
人住まぬ屋敷の池の氷かな
溝川に 竹垂れかかる 氷かな
武蔵野も 空も一つに 吹雪哉
ほっかりと 日のあたりけり 霜の塔
瓦斯燈や 柳につもる 夜の雪 瓦斯燈=ガス灯
春待つや 椿の莟 籠の鳥 莟=つぼみ
死はいやぞ 其きさらぎの 二日灸 2月2日と8月2日に灸を据える
節分や 親子の年の 近うなる
あたたかな 雨がふるなり 枯葎 枯葎=かれむぐら=枯れた草むら
氷解けて 古藻に動く 小海老哉
春浅く 乳も涙も 氷りけり
消えて雫 生きて目のある 白魚かな
白魚や 椀の中にも 角田川
白魚や 氷を捨つる 佃島
雪解や 竹はね返る 日の表
春寒き 寒暖計や 水仙花
蕗の薹 ほうけて 瓶にさされけり 蕗の薹=ふきのとう
温むより 何やら萌ゆる 水の底 温む=ぬるむ
青海苔や 水にさしこむ 日の光
砂川や 小鮎ちろつく 日の光
朝寒や 雨戸あくれば 日の光
あらたうと 青葉若葉の 日の光 芭蕉
君行かば われとどまらば 冴返る 冴返る=さえかえる=暖かくなりかけて再び寒さがぶり返す
残雪ニ 鶏白キ 夜寒カナ 夜寒=立春を過ぎてからの寒さ
雨だらだら 余寒をふって 落しけり
内のチヨマが 隣のタマを 待つ夜かな 猫
雨に友あり 八百屋に芹を 求めける
うれしくも 芹生ひけらし 井戸の端
琴聞え 紅梅見えて 屋根見えて
鶯の 鳴きさうな家 ばかりなり
蠣殻の うしろに白し 梅の花 蠣殻=牡蠣殻=かきがら
長閑さや 障子の穴に 海見えて 長閑さ=のどかさ
稽古矢の 高くそれたる 辛夷哉 辛夷=こぶし
ここぢやあろ 家あり 梅も 咲て居る
下町は 雨になりけり 春の雪
大砲の どろどろと鳴る 木の芽哉
大砲を 海へうちこむ 二月哉
大砲の 車小さき 夏野かな
一つ落ちて 二つ落ちたる 椿哉
赤い椿 白い椿と 落ちにけり 碧梧桐
蛇の穴を見すてる 日和哉 蛇=くちなわ=朽ちた縄
落としたか 落ちたか 路の椿かな
日に鳥 それがどうして 春の朝
藍壺に 泥落としたる 蕪かな
紙雛や 恋したさうな 顔許り 許り=ばかり
日一日 同じ所に 畠打つ
一村は 谷の底なり 雉の声
芹薺 汽車道越えて 三河島 芹薺=せりなずな
山賊が 飯たくあとの 菫哉
土筆煮て 飯くふ夜の 台所 土筆=つくし
道のべに たまたま土筆 一つかな
一つ長く 一つ短し つくづくし
うららかや 角の間の 善光寺
蓮花草 我も一度は 小供なり 蓮花草=蓮華草=れんげそう 小供=こども
欄干や 東に見ゆる 春の山
旅人や 馬から落す 草の餅
すり鉢に 薄紫の 蜆かな 蜆=しじみ
涅槃像 写真なき世こそ たふとけれ 涅槃像=ねはんぞう
春や 昔十五万石の 城下町
故郷は いとこの多し 桃の花
春や 昔古白といへる 男あり 古白=こはく(人名)
毎年よ 彼岸の入に 寒いのは 入=いり
鷹は鳩に 鉄砲は豆に 御世静か 御世=みよ
蒲公英や ローンテニスの 線の外 蒲公英=たんぽぽ
蒲公英ヤ ボールコロゲテ 通リケリ
書に倦んで 野に出れば 野の霞哉
一桶の藍 流しけり 春の川
顔を出す 長屋の窓や 春の雨
春の野や 何に人行き 人帰る
ある時は 月にころがる 田螺哉 田螺=たにし
ある時は すねて落ちけり 凧 凧=いかのぼり=たこ
ちらちらと 小鮎ののぼる 夕日哉
鯉の背に 春水そそぐ 盥かな 盥=たらい
陽炎や 石の仁王の 力瘤
盗人の 昼寝の上や 揚雲雀 盗人=ぬすびと 揚雲雀=あげひばり
榛名笑ひ 赤城泣き 妙義怒る哉
髭剃ルヤ 上野ノ鐘ノ 霞ム日ニ
カナリヤは逃げて 春の日 くれにけり
カナリヤの餌に 束ねたる はこべかな
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