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飯田龍太監修：旅の季寄せ 秋（日本交通公社、昭和61年）28
此の道や 行く人なしに 秋の暮 松尾芭蕉
秋の暮 大魚の骨を 海が引く 西東三鬼
百方に 借あるごとし 秋の暮 石塚友二
秋の山 ところどころに 烟たつ 暁台（ぎょうだい） 烟＝けむり
思ひやる 越の白山 しらねども 一夜も夢に越えぬ夜ぞなき 紀貫之 越＝こし
奥田白虎編：川柳歳時記（創元社、昭和58年）514
つるべ落とし 女一人に 暮れ急ぐ 木村玉子
人恋し ワイングラスの 秋の暮 安倍光子
秋夕陽 父の小じわを 深くする 宮本酔放
鍵っ子に 秋の夕陽の 容赦せず 池上翠柳
秋の暮れ 山も 他人も 無言なり 有沢道子
秋の暮れ 焚けば 隣も くべにくる 村上満子
落ちている 秋を拾って 日が暮れる 高橋武郎
錦絵の眺めに飽きぬ 秋暮れる 秀平美代子
奥田白虎編：川柳歳時記（創元社、昭和58年）514
風をさえ 人かと思う 秋の夜 伊藤千代子
同情を素直に受ける 秋の夜 甲斐博美
秋の夜の 葉書 ポストへ 音もなく 延原句沙弥
すこし酔い わびしさ募る 秋の夜 鋳谷京糸
一人では惜しい 星降る 秋の夜 越智かるお
しとしとと 思い出が降る 秋の夜 三隅正好
奥田白虎編：川柳歳時記（創元社、昭和58年）514
夜が長し 母の灯 子の灯 ひとつずつ 篠原北斗
欠伸から 欠伸をもらう 夜の長さ 黒川一風
明日の米 といで 独り居の 夜長 山本スミ子
夜の長いことは 母から口をきり 岸本水府
トランプの 女 ひとりの 秋夜長 杉村鐐一
秋夜長 運命線へ 灯を落とす 津川紫吻
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