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時実新子：川柳 新子座 （朝日新聞社、1990）190-205
うららかな死よ その節は ありがとう 時実新子
傘さして 夜道を急ぐ 死の予感 海地大破
この世から いや応なしに 押し出され 村井酉舎
突然死 何はともあれ 送らねば 石田 都
死の予告あれば 金など 皆使う 谷口秋之助
死んでから 楽になる 顔ばかり 見る 金澤紀六
死後のこと ふと考える 虫の声 上野天井
父の死へ グングン 凧の糸 のばす 森 祐美
恥部さらす やがて迎える 死のために 多間哲夫
あの人も 死んでしもうた そっと泣く 楠岡房子
一度だけ生き 一度だけ死んで行く 河野基樹
夏石番矢：現代 俳句 キーワード 辞典 （立風書房、1990)
死近しと げらげら 梅に笑ひけり 永田耕衣
泉辺の われ等に遠く 死は在れよ 中村草田男 在る＝ある
夏 真昼 死は半眼に 人をみる 飯田蛇笏
母の死や 枝の先まで 梅の花 永田耕衣
死は 春の空の渚に遊ぶべし 石原八束
死の襞をはらへば ひとつ 籾 落ちぬ 河原枇杷男 襞＝ひだ 籾＝もみ
万緑や 死は 一弾を以て足る 上田五千石
昼顔や 死は 目をあける 風の中 河原枇杷男
耳老いて 死は 束の間の 煤降る闇 高柳重信
月の下 死に近づきて 歩きけり 星野立子
死は ときに 木を こつこつと 叩く鳥 尾利出静一
死ぬること 笑ひ話に 日向ぼこ 増本和子 俳句2012.4 p269
夏石番矢：現代 俳句 キーワード 辞典 （立風書房、1990)
映画の 死者に また 葬送の楽 おなじ 林田紀音夫
死者の匂いのくらがり 水を飲みに立つ 林田紀音夫
一筆桃色 死者に一重の まぶたあり 折笠美秋 一筆桃色＝みょうがのこ
神田忙人：朝日せんりゅう１２５０選 （朝日新聞社、1992）
幸せは 死ぬ日を知らぬことと知り 吉沢和子
殺意なく 至近距離から 狙い撃ち 小島範浩
友 死んだ 病棟 しんと 八重桜 武田正
人の乗るものと見ている 霊柩車 植田誠二 霊きゅう車
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